カウンセリングと言うのは言葉にしにくい人の心の叫びを受け止め、理解し、そして明るい方向に導くプロセスでもあります。そのベースに傾聴があります。

目 次
1.カウンセリングの基本である傾聴
2.大切な人を支えるチカラ
3.陰陽の感情が変化につながる
4.カウンセリングとの一体化

1.カウンセリングの基本である傾聴

しっかりとした傾聴を踏まえて、カウンセリングをしてもらえると、悩んでいる人は自分の行くべき道に明るい光が差したかのようになります。しかし、傾聴がずれていると自分がいない場所を照らしているような感じになってしまい、カウンセリングがうまくいきません。

特に悩みを抱えている人や障害を持っている方、社会的にマイノリティーと呼ばれる人たちは特殊な立場から社会を見ています。傾聴のスキルを使わずにただ聞いていると多くの場合、相手の言いたいことではなく、聞く側が聞きたいように聞いてしまいます。

そうなったらそれ以降の対処はすべて結果につながらないことになってしまいます。

 


2.大切な人を支えるチカラ

傾聴がしっかりできると悩んでる人がどんな気持ちを訴えたいのか、今までどんな工夫をしてきたのか、どんな観点で社会を見ているのかなどがはっきりわかります。

うつ病や統合失調症、摂食障害等の人は周囲の人にほとんど理解されていません。多くの方は、周囲の人に気を遣って誤解されたままでいたり、理解されることを諦めてしまっていることも少なくありません。

特に不登校、引きこもりの問題等は大掛かりな対策をうったりするのは逆効果ですし、変な心理療法を無理矢理、適用するよりも、十分に傾聴することの方が有効であることが多いのです。本人自身も言語化できないような心の叫びを理解するのは簡単なことではありません。

場合によっては、カウンセラーや親が体験したことのない身体感覚に悩まされていることもあります。

だからこそ、傾聴のスキルを使って普通の会話では聞き出せない心の叫びを聞くことが役に立ちます。

親子の理解にも

不登校、引きこもりの問題は外部からのサポートを得ることも重要ですが、最終的には親子が分かり合えることがポイントになります。つまり、親が子供の傾聴がしっかりできるかどうかがポイントなのです。

 


3.陰陽の感情が変化につながる

傾聴をするときに何を聞いたらよいかはその場面によります。

老人ホームなどでは昔を思い出すような話が大事なこともありますし、クリニックなどでは悩みの話に加えて、未来の希望や興味があることなども聞き出したいものです。カウンセリングの一部として傾聴を使うときには最低でも「怒り、悲しみ、憂鬱、不安」などのマイナスな感情に紐づくエピソードと「喜び、感謝、安心」などのプラスの感情に紐づくエピソードを聞いておきます。そうすることでそれ以降、カウンセラーが話題を切り替えるだけで、プラスとマイナス、最低でも2つのモードを話し手(クライアント)から引き出すことができるからです。

 


4.カウンセリングとの一体化

カウンセリングに慣れてくると何をすればクライアントさんが変わるのかがわかるようになってきます。そして、傾聴に慣れてくると話題を自由自在に促すことができるようになってきます。その2つが揃うとうなづくタイミングを少し変えるだけで、話の軌道を変え、聞いているだけなのにカウンセリングの効果を出すことができるようになってきます。この領域になると「ワークをしますよ」のようなプロセスもクライアントさんには見えませんし、長々と説明したり誘導することもないので、「話をしているうちになんだかわからないけれど解決してしまいました」という結果になります。この「わからないうちに解決」をわかって促すのがプロのカウンセラーの仕事です。

カウンセラーが何もしないように見えるメリット

カウンセラーが何もせずに傾聴をしているだけで元気になったとしたら、クライアントさんは自分の手柄のように感じます。自分の回復する力を信じることができるようになります。カウンセラーが素晴らしい力を発揮したような印象になるよりはクライアントさんがみずから話をしながら解決してしまったというエピソードのほうがクライアントさんの力を引き出せます。能ある鷹は爪を隠すという傾聴を目指してください。

相似形を探して傾聴する

カウンセリングの効果を意識して傾聴する場合ですが、問題のエピソードを聞いている最中に出てくる「悩みの出口の扉」と思われる場面で「へぇ〜〜」と印象的なあいづちをうっておきます。(アンカーリングと呼びます)そして、趣味や自然現象など全く違う話を傾聴できるように話を促します。趣味を習得していく過程や自然現象の移り変わりの中にクライアントさんの悩みとストーリーが似ているものがあります。数学でいう相似形を探します。趣味や自然現象のエピソードの中で「出口の扉」に相当する話が出てきたら、先ほどと同じトーンで「へぇ〜〜」と印象的なあいづちをかぶせるとクライアントさんの中で両者がつながります。(アンカーリングの発動)そうすると趣味や自然現象のエピソードを鍵として、問題のエピソードの錠が開きます。

このようなカウンセリングができるようになるとカウンセラーは2回の「へぇ〜〜」以外にテクニックを使っていませんので、クライアントさんは自分の力で良くなったと思ってくれます。

 


<カウンセラーにも傾聴講座>

心理カウンセラーや臨床心理士などの資格を持っている方でも「傾聴」が苦手な人は少なくありません。傾聴のスキルの中には「人慣れ」や「豊富な経験」「自己肯定感の高さ」なども厳密に言うと含まれてしまうからです。心理職をしている人は悩んでいる人の力になりたいと思っておられると思います。そして、場数を踏めば踏むほど、それがいかに難しいことか実感することでしょう。

多くの心理職の人は経験とともに「こういう人は治らない」「カウンセリングが向かない人だ」「あの人には問題がある」のように理由をつけては切り捨てるようになってきます。でも、もう一度初心に帰ってください。その「やりにくい人だ」と感じる何かこそが、クライアントさんの生きにくさです。傾聴のスキルを何段階も深めていくと今まで無理だと思っていた人の対処ができるようになります。

会話ができない人。反抗的な人。余命が短い人。向き合ってくれない人。反社会的な考えを持っている人。どんな人でも同じ人間です。言葉じゃないと通じないと聴覚障害者は思っていないかもしれません。多様な人の傾聴を通して、心理カウンセラーとしての「豊富な経験」を是非積んでください。

そのために「傾聴」の粋を集めた講座を作りました。一般論の講義とはだいぶ違います。