家族の問題は非常にデリケートです。
1回や2回の傾聴では理解しきれない複雑な問題がほとんどの場合、隠れています。

カウンセリングをしていて感じるのは「カウンセリング当初の情報と実態は違う」ということです。多くの場合、「それ最初から言ってくださいよ(言うのは難しいのですが)」と思うような重要な問題や確執が表面化していないことが多いのです。そのため、結果として、傾聴を重ねていくうちに状況が二転三転して、ようやく正確な状況が把握できることが少なくありません。

目次
1.育児ノイローゼに対する傾聴
2.仲間割れゲーム
3.気持ちにフォーカスする

 


1.育児ノイローゼに対する傾聴

今回は「暴力を受けている」というお嫁さんの実話を引用して、傾聴について考えてみたいと思います。

暴力を振るわれている!
私の甥っ子のお嫁さんがある日突然電話をよこしました。「夫から暴力を振るわれている」と相談があり、驚いて呼び寄せて本人に話を聞くことにしました。そのお嫁さんの家には出産したばかりの小さい子がいて、毎晩おびえているように思えました。これは危険だなと思い、兄夫婦に話そうかと思いましたが本人からはそれだけは止めてほしいと懇願されました。

それ以降、何度か迎えに行ったり、本人に傾聴をしたり、メールのやり取りをしていましたが、兄夫婦も含めて話し合わないと解決しないと思いきって場を設けてどうするか話すことにしようと決めました。

ところが先に兄夫婦に相談すると「今度はそっちにそんな話をしていたのか」という返事が。どういうことか聞くと、私たちにもそういう相談があり、あまりにもおかしいので息子に確認したところ暴力なんてふるっていないし、家では楽しく過ごしているというのです。

どうやら育児ノイローゼ気味でもともと寂しがりやな子のようですが、日中赤ちゃんと二人きりで煮詰まってしまい誰かにかまってもらいたかったようでした。なんだ・・そういう事か・・誰とも話さないとつらい、自分の話を聞いてもらいたいと思う人もいるんだな・・と思い 「なぜ?どうして?」と聞くよりも相手の話を最後まで聞いてあげるということで救われることがあるのだなと思いました。問題を解決するのではなく、聞いて受け止めることで助けになることがあることを痛感しました。

それ以来、じっくりきいてあげるようにしていたら赤ちゃんの成長と共に落ち着いて下の子も生まれて今も仲良く家族で暮らしています。

「傾聴をすれば一番大事なことを話してくれる」とは限りません。傾聴を通して、問題を解決して欲しい人もいれば、注目して欲しい人もいるからです。別のページで述べていますが、傾聴には目的があります。話をする人が何を意図しているかによって傾聴のやり方が変わってきます。

 


2.仲間割れゲーム

交流分析(TA)のゲームの中に「仲間割れゲーム」と呼ばれるものがあります。いろいろな人にいろいろな情報を流して、混乱させ、結果として自分の方に意識が向くようにするコミュニケーションの仕方です。

多くの場合、当人は「仲間割れゲーム」をしているつもりではなく、過度なストレスや寂しさ、八方塞がりな感覚から逃れるために苦し紛れにしていることが多いです。そして、傾聴がその「仲間割れゲーム」の一部になってしまうことがあります。傾聴をしている人が傾聴した内容を鵜呑みにして、「暴力振るうなんてひどいじゃないですか!」のようなリアクションをすると大変なことになります。

 


3.気持ちにフォーカスする

悩んでいる人は「理解されないかもしれない」「わかってもらえなかった」「誤解されたことがある」のようなさまざまな思いから、ストレートではないコミュニケーションの仕方をすることがあります。

「暴力を振るったか?」という事実、情報に意識を向けすぎると「どのように解決したらよいか?」「誰が悪いのか?」のような発想になりがちですが、「どんな気持ちで連絡をしてきたのか?」にフォーカスして、気持ちを聞くことができると問題、伝えたいことの本質に近づくことができます。

悩んでいる人は情報ではなく、気持ちを伝えようとしている。

この原則を忘れずに傾聴をしていきたいですね。