人にはいろいろな状態があります。興奮している時、落ち込んでいる時、考え込んでいる時、静かにしている時。その人の状態によって、コミニケーションの仕方が当然変わってきます。興奮して叫んでいる人に対して、静かに小さい声でこんにちはと言ってもあまり意味はありません。流されてしまったり、場合によっては聞こえないかもしれません。コミニケーションを始めるにあたって、ペースを合わせることをペーシングといいます。ここでは傾聴におけるペーシングの活用方法についてお話しします。

目 次
1.ペーシングとは?
2.なぜ必要なのか?
3.傾聴での生かし方
4.優しくすれば良いのではない
5.練習方法

1.ペーシングとは?

そもそもペーシングとは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
まずはその人のあり方、状態があります。静かに座禅を組んでるようなあり方だったらそれに合わせる必要があります。逆に大声で叫んでいるような状態だったらこちらもそれに合わせます。その世界観に聞き手が馴染んでいなければ話し手は心許してくれません。幼稚園に置いて、ペーシングをすれば子供たちから浮かなくなります。子供たちの中に明らかにフォーマルで異質な大人がいれば目立ってしまいます。一緒に走り回ったり、ときには声をあげたりして楽しんでる大人は馴染むことができます。これがいわゆるペース合わせです。仮に幼稚園でそのやり方が通じたからと言って、裁判所で、居酒屋で、電車で、老人ホームでそのやり方が通じるとは限りません。それぞれにフォーマルな態度を取ったり、静かにしていたり、ゆっくり話す必要があるかもしれないのです。このようにして傾聴を始めるベースとなるペース合わせをするのをページングと呼びます。

 


2.なぜ必要なのか?

この手順がもしなかったら大声で叫ぶ人と静かにボソボソ話す人がコミニケーションをすることになります。それではお互いの不一致が際立ってしまい、特に傾聴するときには話し手の伝えたい気持ちが聞き手に届きにくくなってしまいます。
傾聴の深い話に入る前にペーシングをして、お互いが無意識に思い描く世界観や呼吸などの身体の状態を近づけておきます。

3.傾聴での生かし方

初めて人と人があって会話するときには緊張するものです。特に悩みの相談に来ている人は落ち込んでることもあり、緊張している人が少なくありません。緊張している状態に聞き手が合わせて、初めては緊張しますねと会話を始めるだけでも話し手との関係性が変わってきます。ああ、この人も少し緊張しているんだなと思うことがペース合わせになるからです。
そしてペースがあってから、聞き手が少しずつ明るい雰囲気に切り替わって行ったり、声を少し大きくしたりしていくと知らず知らずのうちに話し手の様子が明るい雰囲気になったり大きな声になります。傾聴しやすいリラックスした雰囲気をこのペーシングによって作り出すのです。
 

4.優しくすれば良いのではない

傾聴ボランティアや心理カウンセラーの多くは話を聞くときに優しくすれば良いと考えている人が多いようです。しかし、優しい接し方が良いのだと言うのはコミニケーションの一面でしかありません。特にペーシングをするときには興奮していたり、怒鳴ったりすることが信頼関係の構築に重要な場合もあります。優しいと言う1つの切り口はあくまでも傾聴する側、カウンセリングする側の視点でしかないことを覚えておいてください。
他人事だからクールでいられる
カウンセリングの時に私はイライラしてしまい怒りの感情で自分の思いをカウンセラーにぶつけたことがあります。しかしカウンセラーは怒りの感情受けたような表情ではなく、いつもと同じ表情でニコニコしながら「それは大変でしたね」と言いました。私が伝えようとしている熱量と違い、何か悩みの間外にいて外から見ているから辛さがわからないようなそんな反応に見えました。しょせん他人事だからそんなリアクションができるんだ。私の中でカウンセラーさんに対する信頼関係が崩れた瞬間でもありました。

 


5.練習方法

カウンセリングスクールのようなところで傾聴練習するとペーシングが下手になります。なぜならば同じようなモチベーション、同じような世界観持ってる人と合わせるのは簡単だからです。普段自分が関わらないようなスポーツ選手、政治家、子供、お年寄りなど異なるカテゴリーの人たちとペースを合わせる練習をしてください。様々な立場の人とペーシングを通してリズムを合わせ、心を通わせて傾聴するベースを作る。これを繰り返すことがより自然なペーシングをするコツです。

 

 


<傾聴を実践的に学ぼう>

傾聴のスキルの一部は机上の空論です。多くの人が傾聴を学び、現場に出て、違和感を感じています。現場で実践できる傾聴を学んでください。