こんにちは。実践心理学講座ブログスタッフの山岸です。

この間、たまたま見ていたテレビ番組で、
『子供の頃からずっとバスの運転手になりたかった』という聴覚障碍者の方を紹介していました。

生まれつき聴覚に障碍があって、コミュニケーションは手話か筆談で、発話は難しい状態です。

子供の頃から、夢はバスの運転手さんになること。

バスの運転手さんになりたい、そう思い続けて自動車の免許がとれる年齢になりました。
けれど、聴覚の点でバス免許の受験資格が得られませんでした。

バス免許がとれないので、代わりにトラックの運転免許を取りました。
そして、運送の仕事に就きました。
知ってか知らずか、バスとは違いますが、大きな車を運転する経験を積んでいました。

 

何年か経ったあるとき、法律が改正されました。
補聴器をつけて、緊急自動車のサイレンの音がききとれれば、バス免許の受験資格が得られるようになったのです。

彼はさっそく、バスの運転免許を取りました。
運転手になるための切符を手に入れたのです。

しかし、ここまで読まれた方は想像に難くないと思いますが、彼が運転手としてバス会社に採用されるのは苦難の道でした。

何社も何社も応募しますが断られてばかりです。
理由はだいたいどこも同じで「お客様とのコミュニケーション」です。

どんなにバスの運転手になりたいか、面接で自分の気持ちを一心に伝えました。
何社に、何人に、何度話したことでしょうか。

やっと、採用してくれる会社が現われました。
(その会社も初めは彼を断ろうとしていました。)

現在、運転手と車掌さんという2人体制で、彼は運転手として乗務しています。

バスの運転手は、ほとんどの時間、バスと向き合っています。
お客様を安心安全に目的地までお送りするために。
運行前の点検や、迅速・丁寧な運転をして。

お客様と直接向き合うのは、お迎えや、お見送りのほんのわずかな時間です。

彼は、点検や運転を丁寧にするのは当然のことですが、
お客様とのわずかな時間をも大切にしたいと考えていました。

自分のお迎えやお見送りをお客様はどう感じているだろう。
お客様に気持ち良く乗車して頂けているのだろうか。
声を出して挨拶しているわけでない、
「お客様とのコミュニケーション」の問題…。

彼はこの問題と向き合うために、
聴覚障碍者で理容室を営んでいる方のもとを訪ねてみました。

理容室で、どんな風にお客様とコミュニケーションをとっているのか。
納得のいくヒントが得られました。

さっそく乗務に実践しています。
お客様からお褒めの言葉を頂けることもあります。
これからもたくさんの課題を乗り越えて、お客様に信頼して頂ける運転手として
成長していきたいと思っています。

そんな番組でした。

 

すごいなぁと思いました。

彼はたくさんのことを諦めたし、たくさんの我慢をしてきました。
そうして、夢を掴みました。

「諦めなかったから、夢が叶った」のじゃないか?ですか?

そういう言い方をすることもできます。
でも、彼のバックグラウンドを想像してみて下さい。
ああだったら、こうだったら、ということがものすごくたくさんあったと思いませんか。
きっと、たくさんの~~だったらを諦めてきましたし、我慢してきました。

彼がしなかったのは、
「自分はバスの運転手になれない」という答えを出さなかったこと。
答えを出さず、「なりたい」という望みを持ち続け、そこに近づく道があるなら、すかさずその道を選んだこと。

 

人というのは、すぐに答えを出したがる、答えを欲しがる生き物のようです。
答えがない状態というのは不安だから、とか言われています。

だから、なりたい何かがあっても、親、学校、社会、自然みたいな、自分より大きな力がNGを出しているような状態だと、「なれない」と答えを出しがちです。
人生の早い段階で、「なれない」という結論を出しがちです。

 

でも、自分が人生を歩みながら内面も外見も変化しているのと同様に、大きな力の方だってなんやかんや変化しているわけです。
知らないうちに。
「なれない」と自分が決めつけていたら、それはもうほぼ確実に「なれない」。
けれど、そう決めつけてさえいなければ、道が開いた時に近づく方を選べば、更に道が開けるかもしれない。

 

諦めたり、諦めなかったりはどちらでもよくて、ただ、未来を決めつけないこと。
それが、自分にとってのより良い人生を歩むコツなのかな、と思いました。。。どうでしょう?