死のうと思っていた。
会社の倒産
死んで全て解決するのなら、今すぐに縄と踏み台を買ってこよう。
遺体処理が面倒なら、海にでも身を投げて底に沈もう。
思いつめるのにも訳があった。私は会社員だった。ごくごく普通の会社員で、普通に家族もいて、普通に子供もいた。でも事業が失敗した。社長が失踪したせいで、会社はてんやわんやしていた。もちろん、それなりに責任ある立場の私にも、責任はふりかかってきた。
多額の借金を抱え富士の樹海へ
結論から言うと、会社は無くなった。顧客に賠償金を支払ったが、その借金はとんでもない金額に膨らんでいる。
死にたい。家族に迷惑をかけすぎた。私が死ぬことで、保険金がおりる。その保険金があれば、なんとか私にも分散された借金を、返すことができるだろう。
家族がいない間に、紐で輪を作り踏み台を踏んで、やめた。このまま死んでは、家の中が大変なことになるだろう。
友達と遊ぶ、と嘘をつき、富士の樹海へと足を運んだ。樹海は予想以上に綺麗な場所だった。ここなら死んでもいいだろう。人目のつかないよう、奥へと行かなくては。
忘れていた誕生日
しかし森に入る前に、私のケータイに着信があった。
子供からだった。
「お父さん、今どこにいるの?ケーキみんなで作ったから食べてね」そんな内容だったと思う。
そうだ。その日は私の誕生日だった。この年になると、いや、忙しくしていたせいで、自分の誕生日すら忘れていた。
私は泣いた。生きていてよかった。そう思った。あのとき死んでいたら、家族はどんな顔をしただろうか。
私は樹海をあとにした。もう来ることは無いだろう。
かけがえのないものはありますか?
一番つらいときにあなたの支えになるのはかけがえのないものです。
あなたの自己肯定感を支える大切なものともいえます。
あなたは誰かのかけがえのない存在です。
誕生日だといえば、誰かはケーキを買ってきてくれるのです。
普段はそこまで意識しないかけがえのないもの探しを実践心理学講座であなたもしてみませんか?