傾聴が役に立った実践事例をご紹介します。

昔、職場で同僚だった女性Aさんは、私(男性)とBさんという女性には、よく愚痴を言っていました。具体的には特定の同僚や上司が意地悪であるとか、仕事上の人間関係の話がメインでしたね。

Bさんは姉御肌で、よくAさんの話を聴いてはあげているのですが、毎回、ある程度のところで「でもさ、それ以上話してもしょうがないよ」とか、「またその話なの?自分で解決しようとしないの?」とか、打ち切ってしまうんですね。

表現が難しいのですが、Bさんの言い方には優しさがあるものの、どこかキツい部分があるし、「一定以上、愚痴話を聞きたくない」という態度が見えてしまうんです。

Aさんに特別な気持ちはなかったので、私は常にAさんを含めて3名以上で食事をしていました。しかし、「Bさんなどに愚痴を言う→話を打ち切られる」の流れを何度も目にし、何だか私自身もしんどい気分になっていました。

そこで、機会があったのでAさんを食事に誘いました。「え?Bさんとかも呼ばなくて良いんですか?」とメールで返ってきましたが、「今回は二人で」と返すと、割と普通に応じてくれました。付き合いも長いので、私に変な気がないのは察してくれたのでしょう。

食事の席では、案の定、いつもの愚痴が出だしました。内心ではもちろん「またか」と思いましたが、まったくもって想定の範囲内なので、腹をくくって徹底的に聴いてみることにしました。「たしかにそれはあるよねえ」とか「あー、あれは厳しいね」とか、とにかく聴きました。「僕もその感じ凄いわかります」なども差し挟みました。

「何でそう思うの?」とか、探ったり質問したりするようなことはもちろんしません。質問をするとしても、「そういう気持ちが高まってきたのって、いつぐらい?」とか、Aさんの話を引き出すようにしました。

結局、3時間ぐらい、Aさんの話は全部愚痴で、2,3種類の話が数回出てくる、というものでした。

そのようなこと3-4回繰り返すうち、Aさんの話には基本的に愚痴が多いながらも「また愚痴ですね(笑)」「あー私またこの話してますね(笑)」とか、「笑い」が混じってくるようになったのです。明るい、別の話題も出るようになりました。

Aさんは職場でも笑顔が多くなり、Bさんに愚痴ることも目に見えて減りました。「人の話に耳を傾けること」が、職場の人間関係改善に一役買ったというところでしょうか。