傾聴にふさわしい座る位置があります。位置を変えるだけで人はアクセスする感覚や情報が変わります。それによって、ひらめきが増えたり、気持ちが上がったり、思い出しやすくなったりします。その傾向を利用して、傾聴の際に座る位置を決めることができます。重要なのは傾聴は「誰に」対して行うのか?「何を」傾聴するのか?「目的」は何かによっても得たい効果が違ってきます。座る位置もそれによって合わせます。

目次
1.位置関係による心理的な影響
2.集団の場合の座る位置
3.左右の座り方とタイムライン
4.固有に存在する傾聴のための座る位置


1.位置関係による心理的な影響

人はその位置関係によって、影響の及ぼし方が変わってきます。後述しますが、左右が違うだけでも反応は違います。プロの心理カウンセラーや交渉などを仕事にしている人の一部はこれを巧みに利用して、より大きな効果が出るような工夫をしています。

傾聴における座る位置(動画解説)

 

1)対面して、至近距離に座る

至近距離で対面して座ると良くも悪くも激しい交流が起きます。ベテランのカウンセラーや短期間で効果を出さないといけないカウンセリング、コーチング、交渉などの時にはあえて、正面、至近距離に座ります。机を挟まず、膝がぶつかるくらいで座ると強烈な影響を与え(受ける)ことになります。受容と共感をするにはやりにくい位置とも言えますが、自立した個と個がぶつかって統合するような場を作りたい時には有効です。

 

2)対面して、離れて座る

距離が離れると影響は少なくなります。机を間に挟んだり、あえて距離ができてしまうようなテーブル越しに座ると影響が出ないので、様子を見るような関わりや衝突を避けたいけれども交流をしたい時などに使います。

 

3)並んで座る

映画館の椅子に並んで座るようなこの座り方はお互いの交流が少なく、逆に映画のような共通の課題、ゴールなどに気持ちがむきやすい状態と言えます。傾聴の座り方としては交流が少なすぎますが、落ち込みがひどい人や関係性(ラポール)が十分でない場合には一緒に景色を見ながら会話をする方がうまくいくこともあります。私たちという感覚を作りやすい座り方です。

 

4)正面を外して向かい合う

占い師はお客さんの正面には座りません。お互いの間で発生するエネルギーをそらすようなこの座り方は初心者のカウンセラーや交流をソフトにしたい場合などに使います。多くのカウンセリングスクールではこの座り方を進めています。45度の角度で座るのもこれに近いです。ベテランになる程、柔軟な対応ができるので即効性が出やすい正面に座るようになります。

 

5)一人のやや後ろにもう一人

後ろからサポートするような位置です。傾聴は顔を合わせてするばかりではありません。3のように真横に並ぶこともありますが、話し手が一歩前にでて、少し後ろからそれを見守るようにして話を聞いた方が話し手が未来を描きやすいこともあります。自問自答を言葉にしてもらう時などにはこの位置が有効です。聞き手に話をするというよりは一人で語り、それを聞き手がうしろで聞いているような関わり方です。親子の場合、うしろから抱っこをするような姿勢で悩みを聞くことで安心感の中で前を向いてもらうことができます。

 

6)問題を挟んで向かい側

キャッチボールをするような位置です。問題が起きた場面や教室、ステージなどを挟んで向かい合います。キャッチボールをする時に横やうしろにいては相手を制御しにくいですが、問題を挟んだ向こう側から目を合わせると簡単なボディーランゲージで「ストップ」「ゴー」などの合図を送りやすくなります。問題を反対側からか囲むことで、問題の見え方をコントロールしたり、問題の周辺にある事象を浮かび上がらせやすくなります。

 

ポジティブになりやすい座り方
高校で教員をしています。学校がある場所はとても緑に恵まれ、春は淡い桜が満開になり、夏は青々とした木々に囲まれ、秋は黄色く紅葉し、冬は澄んだ空がきれいにみることができます。
生徒と面談をする際にはその景色が見られるように並びます。役職上プールサイドにいることが多く、太陽の光でキラキラしたプールを生徒と共に見ることができる環境で面談をします。生徒が右側を向くと私がいるように座ってもらいます。角度はいわゆる45度を心掛けていますが、生徒が自由に椅子を動かして話しやすい位置に座ってもらいます。
遠くが見えづらい環境で話を聴くよりも、キラキラしたものを一緒に見ながら話をすることで「みんなを笑顔にしたい」「クラスをまとめたい」「文武両道を極めたい」と、ポジティブな気持ちが生徒から出てきやすいと感じています。

 


2.集団の場合の座る位置

2人以上の場合にはさらに複雑な影響が出ます。傾聴も1:1ではない場合もありますので、一例をご紹介します。

1)教室型

教室型の場合、前に先生やリーダーがいて、それ以外の人は前に向かって並ぶ形になります。リーダー的な人との関わりが強く、横のつながりは「私たち」隣やすい座り方です。学校でもよく起きますが、リーダーは良くも悪くも輪の外の人で、クラスメイトが仲間という意識が生まれやすくなります。

 

2)長方形のテーブル

長方形のテーブルでは上座と下座の概念が生まれやすいので、階層意識を生みやすい座り方です。傾聴を行うものが2人並んでいた場合、無意識に上座にいる人を中心に話をしてしまったり、上座側にいる人に緊張し、下座にいる人とリラックスして話ができることもあります。

 

3)半円形のテーブル

円の中心に全員の顔が向くような状態になります。意識が共通のゴールにむきやすく、フラットの関係が気づきやすい座り方です。上下関係を作らず、数名の傾聴を同時にするような場合に良い配置と言えます。

 

4)横並び一列

ほとんど交流が起きないので、グループは多くの場合まとまりません。3人以上で話す時にはあまり良い配置ではありませんが、交流を最小限にしたい場合に有効なことがあります。

 

5)丸テーブル

対人関係に焦点がむきやすい座り方です。全員の立場がフラットで同じテーマについて交流が促進しやすい並びと言えます。4名程度で丸テーブルを囲んで傾聴をすると話が引き出しやすいことがよくあります。

 


3.左右の座り方とタイムライン

「昨日のお昼ご飯何食べましたか?」

皆さんはどちらに目が向くでしょうか?右利きの人の多くは左側を見ます。そして、この左右の傾向はその人によって固有のものがあります。つまり、一旦、「この人は左を見て思い出すな」とチェックできるとそれ以降も同じ傾向が続くということです。

タイムラインと座る位置(動画解説)

1)過去の話をしたいの?創造性を発揮したいの?

傾聴と一言で言ってもどんな話をするのかはシチュエーションによります。カウンセリングならば、ネガティブな話を思い出して話すことも多いかもしれませんが、未来を創造するような会話が中心の傾聴もあります。それによって、座る位置も当然変わってきます。

2)過去の話は左側

右利きで、過去のことを思い出す時に左を向く人だとわかったら、左側かに視線が向くようにしてあげたほうが会話が弾みます。記憶にアクセスしやすいからです。聞き手が左前にいれば、聞き手を見ながら過去を思い出せますが、聞き手が右側にいたら、左を見て思い出して、右を見て伝えて・・・となります。ベテランのカウンセラーは話題の切り替え、ワークの途中で右左の位置を気にしながらスッと移動します。

3)未知の話は右側

同様に過去が左の人は右に未来があります。聞き手が右側にいれば、未来を想起しやすくなります。解決志向アプローチをするカウンセリングルームは話し手の左が壁、右がオープンスペースになっています。右側に空間があったほうが創造性を引き出しやすいからです。

 


4.傾聴するための座る位置は1つではない

傾聴をするための座る位置は固有に存在します。つまり、厳密には一人一人、場面によっても違うということです。

適切な位置は一つではない(動画解説)

 

教室の席が自由席の時に正面、右、左、後ろなど座る時に決まった位置がありませんか?もちろんやる気が無くて後ろに座るというのはこの件とは違うかもしれませんが、一生懸命に授業を受けようとした時に無意識に選ぶ席の位置はその人が最も入力しやすい位置であることがあります。プロ向けの講義ではお伝えしていますが、黒板の文字を記憶しやすい生徒の位置があります。その席に座ると記憶しやすく、違う位置では記憶しにくい。そういう位置関係すらあります。

自分にとってはどの角度が学びやすく、どの角度がネガティブな話がしやすいのかを傾聴を重ねながら探してみることをお勧めします。

 

 


<傾聴しやすい部屋の配置>

傾聴しやすい部屋の配置があります。聞き手と話し手の距離、部屋の外とどれくらい繋がっているか?閉鎖されているか?部屋の中にあるものが雑音になっているか?インスピレーションのもとになっているか?BGMは?アロマなどの香りがあったほうが良いか?邪魔になるか?

傾聴ひとつする場所を作るにも工夫できることはたくさんあります。「一期一会」を大事にするためには相談者が左利きかどうかなども部屋の配置を決める重要なファクターであると言えます。