カウンセリングの用語でラポールとは信頼関係を構築するといった意味です。
カウンセリングをする時だけでなく、傾聴する時にもこの信頼関係は非常に重要です。

ラポールと名前をつけてしまえば簡単なことのように感じますが、ラポールとはつまり初対面の人とすぐに仲良くなる力といえます。もし営業マンだったらこれができるだけで営業成績が伸びるでしょうし、これさえできれば友達関係や人間関係で悩むこともほとんどなくなります。

ラポールとは傾聴スキルの一部と言うだけでなく実は非常に奥が深く、かつ重要なものだと言えます。

目 次
1.ラポールとは何だ?
2.ラポール構築法

 


1.ラポールとは何だ?

傾聴やカウンセリングの講義を受ける時にラポールという言葉はよく出てきますがその本質を実際に理解してる人は多くありません。ラポールができている状態とはどういう状態を指すのでしょうか?

まずそこからご説明したいと思います。

1)身体的同調

比較的浅いレベルのラポールができている状態を確認する1つの方法が身体的な同調行動です。

よく仲の良いカップルがお茶を飲むタイミングが一致したり、無意識にそっくりなポーズで足を組んでいたり、壁にもたれかかっていたり、、、、そんな身体的同調が起きるレベルまで関係を構築することができれば浅いレベルでのラポールができているといえます。

職業柄、私は心理カウンセラーをたくさん養成していますので、10組ぐらいのカウンセラーとクライアントが同時にカウンセリングをしていても遠くから見ていてラポールの度合いを測ることができます。遠くからでは話し声が聞こえませんが、身体的同調や呼吸が一致しているか等を観察することで判断ができます。つまり外見からでもある程度はラポールが計測できます。

無意識な体の揺れが同じリズムに乗っているように見えれば、ラポールの度合いも深い傾向にあります。逆にクライアントさんが石のように固まって呼吸が止まっているかのように見える時にカウンセラーが興奮して呼吸が荒くなってたとしたらそれはうまくいっていません。

イラストのようなカップルがいたとしたら、ラポールはどうでしょう?

とてもよく同調していますよね!
表情と良い、口の形と良い、
男性が両手をあげたら完璧です

 

2)言語的同調

ラポールがさらに深まると身体的同調に加えて言語的同調が起きるようになります。

つまり、同じような言葉を話すようになってきます。特に注意したいのはオノマトペと呼ばれるいわゆる擬態語、擬声語と呼ばれるものです。

AUのCMでは桃太郎が桃から生まれてくる場面をパッカーンと言うオノマトペで表現しています。そして、それを他のメンバーやかぐや姫が生まれてくる場面もパッカーンと言う同じオノマトペで表現しています。あのシーンはCMの中の演出ではありますが、誰かが言い始めたオノマトペを他の人が引用すると言うのは言語的同調が起きていると言うことだといえます。

「今、話しているオノマトペや固有名詞、感情を表す言葉をどちらが先に使い始めたか?」を気にしながら会話をします。

そうすることで相手が使い始めた言葉をこちらが引用して言語的同調を示しているのか、聞き手が使い始めた言葉を相手が引用してくれているのかを区別することができます。

傾聴する際に聞き手側が初めてその場に出した言葉を話し手側がもし引用することがあれば、言語的同調が起きていると言う意味でラポールが深まったと判断できます。

3)さらなる同調

心理カウンセラーはここからさらにラポールを深めていきます。

しかし、傾聴するのが目的であれば、身体的同調と言語的同調が観察できるレベルでラポールが深まっていればかなりのレベルで傾聴することができるといえます。

 


2.ラポールの構築法

傾聴を始める場面にもよりますが、よほど無理矢理接触を持って話を聞き出そうとしない限りは、「話を聞いてもらえそうだな」と、ある程度の期待がありますのでラポールは取りやすいといえます。この際に重要なのは話し手が主体的に話したいと思っているその気持ちの腰をおらずに流れを作ることです。

1)相手の状態によってラポール方法を変える

一般にラポールを構築するために「うなずきをする」とか「相槌を打つ」とか表面的なテクニックを大事にしてる人をよく見かけますが、話し手がどんな状態にあるのかを見極め、それに従ってやり方を変えていくのが良い方法だといえます。

まず最初に対面して話を始めた時に相手の頭の中にすでに話題がセットされているかどうかを見極めます。話題がセットされていて、ある程度話を始められそうなのであればその話をしてくださいと言わんばかりに余計なことをせずに本題に入ってもらいます。

聞き手が余計な質問、例えば、「いつですか?」 と聞いてしまうと話し手は時間に関わる事しか答えることができません。もしかしたら場所や景色や気持ち、一緒にいた人の話をしたかったのかもしれないのです。

自由に話を進めることと比べると「いつですか?」と聞かれるだけでも、話の流れが相当制限されていることがわかります。そして、余計な質問によって話の腰をおられてしまえば、ラポールは低下してしまいます。

2)相手が抱いている世界観を大事にする

ラポールを深めるためには

  • 相手が何を伝えようとしているのか?
  • 相手の持っている世界観は何か?
  • 相手の視線が動いた理由は何か?
  • 相手の手が動いているのはなぜか?

等に気持ちを向ける必要があります。

そして、例えば、相手の手が「大きな木」をさしているように見えれば聞き手もあたかもそこに「大きな木」があるかのように話をすれば同調行動が起きます。こうやってある程度以上のラポールを構築してから傾聴の本題に入るとスムーズに進みます。

3)ラポールの深め方・切り方

慣れないうちは人と仲良くなるだけで精一杯かもしれません。しかし、慣れてくれば瞬間的にラポールを強めることもできます。逆にプロの心理カウンセラーはそれができなければ仕事になりません。

また、飛び込み営業の人や芸人さんなどでも瞬間的に人の気持ちをつかみラポールを深めることができる人もいます。ここではそこまで言及しませんが、ラポールに慣れてきてラポールを深めることができるようになってきたら、今度はラポールの深まりすぎで悩んでしまうことがあります。

ストーカーのようにカウンセリングの時間外でも付きまとわれてしまったり、恋愛に発展してしまったりして本来の傾聴やカウンセリングができなくなることもあります。

そうなった場合、今度はいちどつながったラポールを切断し、その効果を減らす必要があります。

これは一般に「ラポールを切る」と言う言い方をします。ストーカーが付きやすいカウンセラー等はラポールが上手な一方でラポールの切り方が下手のため関係性がおかしくなってしまいます。

ラポールの度合いは60点から80点位が適当で60点を切ると信頼してもらえないので傾聴やカウンセリング的な関わりがうまくいきません。そして、80点を超えてしまうと今度は恋愛関係のようになってしまいクールに傾聴することができなくなってしまいます。

傾聴してる最中に感情移入しすぎたり、話す側も聞き手に依存した話し方になってしまうこともあります。それでは傾聴の効果が出せないばかりか徐々に関係性が悪くなってしまいます。

ラポールの切り方はプロの心理カウンセラーには細かく教えています。なぜなら、職業的に必須なスキルだからです。

ここでは簡単な方法1つだけご紹介します。

普段、話し手の人に私はあなたに集中して話を聞いていますよと言うことを伝えるために聴き手は時計を見るモーションがばれないように配慮をします。一方でラポールを切りたい時には誠実で丁寧で受容的な言葉を使いながら、時計をチラッと見ます。これだけでも信頼関係の度合いが下がります。聴き手の集中力が切れ、時計を見たり、そわそわし始めたら話し手は話しにくいだけでなく、集中してくれない寂しさを感じるかもしれません。そうすることでラポールを切ることができます。

その他の細かいスキルとしてのラポールについては別のページでもご紹介しているので参考にしてください。

 


<ラポールとは存在を認めること>

問題行動を起こす部下や子供。傾聴を進めていくと必ず「存在を認めて欲しい」という話にぶつかります。そうなってしまうのはなぜでしょうか?ラポールは傾聴のベースとなる関係性を作るプロセスですが、これができると人は人と安心して繋がれます。この「安心してつながる」がないからパワハラが起き、家庭内不和が起き、不登校・ひきこもりが起きます。

多くの人は「家を買う」「車を買う」「旅行に行く」などに時間とお金をかけますが、勘が良い人はそんなことをしても喧嘩をしていては無意味なことに気づいています。大胆な企画を立てなくても、ただそこにいる人とつながるだけで人生は明るくなってくるのです。そのための傾聴講座を用意しました。興味がある方はご覧になってください。