平成27年度の厚生労働省が発表した福祉行政に関する報告書によると児童虐待の相談件数は年々増加しています。子供の数が減り続けているにもかかわらずです。
目 次
1.児童虐待の種類
2.心理的虐待
3.虐待をする親へのケア
4.子供の将来への影響
1.児童虐待の種類
児童相談所での虐待相談の内訳は心理的虐待が47.2%身体的虐待が27.7%ネグレクトが23.7%性的虐待が1.5%です。(厚生労働省)
1)心理的虐待
心理的虐待は目に見えません。嫌味を言ったり、脅かしたり、大声を出すような言葉によるものや無視をする差別をするといった精神的なダメージを負わせるようなものを指します。親が子供を育てる中で少なからず心理的虐待に近いことをしてしまうことはあります。また、受け止める側のダメージにもよりますので、一概にこの言動は心理的虐待と言えるわけではありません。
2)身体的虐待
身体的虐待とは殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶるなどのいわゆる暴力的なものから、さらにやけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束するなどまで幅広いものがあります。身体的虐待を受けるとその出来事に関連する経験をするとフラッシュバックしたり、関連した場面を避ける回避行動をとることもあります。また、精神的な活動が低下して無気力になる人もいます。
3)ネグレクト
ネグレクトとは育児放棄、育児怠慢などを指します。具体的には、家の中に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないのようなことが当たります。
4)性的虐待
性的虐待とは、子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなどをさします。
2.心理的虐待
いわゆる虐待という言葉でピンとくるような言葉による脅しや罵倒、威嚇、そして、無視などは心理的虐待として理解しやすいですが、例えば、子供の前で夫婦喧嘩をすることも心理的虐待につながっていることもあります。
1)空気を読むために学ぶ
ゆとり世代以降の子供たちは「空気を読む」文化の中で育ってきました。自分のせいで人に負担をかけてはいけない。人に迷惑をかけてはいけない。空気を読まないといけない。と信じている彼らは夫婦喧嘩を見て「自分はしないようにしよう」と学びます。彼らは感情のぶつかり合いを見るたびにショックを受け、生き方をより窮屈なものにしていきます。
2)板挟み(ダブルバインド)
子供は基本的に親に逆らえません。あるいは尊敬していて逆らおうとしません。そんな親が矛盾するような教育方針を持っていたり、父親と母親が相反することを言うと子供はその両方に従おうとします。父親が頑張れといえば頑張ろうとし、母親が休めといえば休もうとします。そして、休んでいる姿を父親に怒られ、頑張っている姿を母親に責められるのです。こうして板挟みになっている間に心の自由がなくなっていきます。これが統合失調症の発症の原因になっているという説もあります。
3)将来への影響
人は過去に受けた心理的虐待の傷跡を未来に引きずります。傷を負った時と似た場面に遭遇すると無気力になったり、恐怖を感じたり、攻撃的になることもあります。子供である時期を過ぎ、大人になった後でもその傷が人生に暗い影を落とすことが少なくないのです。
3.虐待をする親へのケア
何も原因がないのにいきなり虐待をする親はいません。社会の様々なストレスの中で親自身も追い詰められたり、精神を病んだ結果として虐待をしていることが少なくありません。
1)親自体のトラウマ
子育てをしていると自分自身が子供だった頃の体験が蘇ってくることがあります。トラウマがある親が子供を育てている場合には子供との関わりが引き金(トリガー)となって、トラウマが引き出され、それによって虐待をしてしまうこともあります。それを防止するためにも親自体のトラウマケアが重要になります。
2)相談者がいること
親といっても人間ですからある程度以上精神的に負担がかかれば、落ち込んだり、問題行動をしてしまうことは考えられます。そうならないためにも親のストレスを受け止めるための相談者が欠かせません。子供の問題を悪化させてしまう家庭ほど人に相談できない傾向にあります。
3)傾聴の役割
傾聴だけで、親の心の闇が晴れるとは限りませんが、ひとりで自分の中に閉じ込めていた思いを開放して、人と分かち合う(共感的理解)だけでも親が抱える負担が小さくなります。
4)児童虐待の速報値(平成27年度)
4.子供の将来への影響
児童虐待の件数が年々増えています。そして、その影響でトラウマを負った子供がそのまま大人になっています。心の傷であるトラウマは目に見えませんが、傷を負った時と似た状況になると発動します。心理カウンセラーにはそのトラウマを除去できる人もいますが、一般には将来にわたってその傷とともに人生を送らなくてはなりません。