ここでは傾聴を学んでいる人がより効果的に傾聴のスキルを身に付けるためのトレーニング方法をご紹介しています。現場を持っている人は即現場で活かすことができますが、スクールなどで学習している人は変な癖をつけないためにも注意が必要です。

目次
1.理解するのではなく身につけるには
2.傾聴のトレーニングは知らない人と
3.正確なフィードバック
4.実践の重要性

 


1.理解するのではなく身につけるには?

「今、これをしなければいけない」と意識すればできることを意識的有能性といいます。傾聴を学び始めの頃はこの状態にあります。

ただ、傾聴を頭で考えて学んでいると、その都度、何かを判断してうなづいたり、質問をしたり、笑顔を返したりすることに意識がいってしまい、結果として不自然な傾聴になってしまいます。傾聴を学んでトレーニングをしようと言う人は傾聴において最も重要なのは「その人のあり方、態度」だと言う事は学んでいると思います。しかし、トレーニングが足りず傾聴が意識的になっているとうなづきやあいづち、共感などを頭で考えてしまいかえってあり方が不自然になってしまいます。

そうならないために重要なのは意識的に考えてスキルを使うのではなく、無意識的に使えるようになるということです。この段階を無意識的有能性といいます。

例えば、英語を覚えたての人が考えながら英語を喋るの意識的有能性といい、アメリカ人が何も考えずに無意識に英語を喋るの無意識的有能性といいます。傾聴のトレーニングにおいて最も重要なのは傾聴に必要なスキルを徹底的に無意識的有能せいにしておくことです。そうすることによって、初めて現場で役立つスキルとして傾聴を使うことができます。

ある傾聴のスキルを無意識的有能性にするためには最小の単位を繰り返し繰り返し練習することが必要です。ここではパートごとのトレーニング方法をご紹介します。

1)観察

最も基礎的な方法は他人のコミニケーションを観察することです。

自分が話を聞くことをしていたり、次の質問を考えようとしていると相手の仕草や動きを観察することができません。そこで観察のトレーニングでは自分自身は会話に参加せずに観察に徹します。3人以上のグループが組める場合には誰かに傾聴してもらい、横からその話し手と聞き手の発する言葉、しぐさ、感情の変化などをただ観察します。観察をしながら、話し手がどのタイミングでこう考えたんではないかとか、このセリフの時に感情が動いたと言ったことをメモしておき、傾聴が終わってから答えあわせをします。

2)うなづき

傾聴している間にどれぐらいの頻度でうなづくか、どれぐらいの大きさでうなずくか、どのようにうなづくかなどは非常に重要な要素です。トレーニングとして、意識的にうなづきの回数を増やしたり、うなづかないで傾聴してみたりして、それをした場合の相手の反応を体験します。実際に試してみるとわかりますが、傾聴を学んでいる人のうなづきは一般に多すぎる傾向にあります。多くの聞き上手な方は驚くほど何もせずに相手の話を聞いていることがわかります。このようにして、最適なうなづきの感覚を身に付けてください。

3)あいづち

うなづきができるようになってきたら、話し手の感情が最も動いたポイントで声を発します。これがあいづちのトレーニングになります。

あいづちをうつ最も良いタイミングは相手の感情が大きく動いた時です。このタイミングであいづちを打つことができるかどうか、それを練習してください。ある程度の時間練習したら、話し手が本当にそのあいづちで話しやすかったかどうか確認をしてください。そしてタイミングが身に付いたら、あいづちの言葉を変えてトレーニングをします。

具体的には「おお!」「へぇ〜」「なるほどなるほど」のようにあいづちを打つ言葉はたくさんあります。傾聴のトレーニングを数分行った後にあのあいづちでよかったかどうか、話し手に確認してください。

4)おうむ返し

話し手が話した言葉を伝え返すことをおうむ返しとか伝え返し、バックトラッキングなどと呼びますが、適切なタイミングで適切な言葉でオウム返しができるかどうか練習します。傾聴を学んでいる人の中にはほぼ全ての単語におうむ返しをしている人もいますが、一般にそれは多すぎることが多いようです。話を聞くのがうまい司会者やインタビューアー等の聞き方を参考におうむ返しを使う頻度やタイミングをコントロールしてみてください。
また、おうむ返しは話し手が話した言葉を引用して伝え返すのが基本です。しかし、単純に言葉が一致していればいいと言うわけではなく、発音や音程、ニュアンスが一致していないと効果的ではありません。その辺を気にしながら無意識的有能性を目指してトレーニングしてみてください。

5)共感

傾聴において共感は最も重要なポイントです。これがうまくいっていなければ、聞き手は話し手の話を傾聴していることになりません。たくさん聞いてもらったけれども理解してもらえなかったと言うことになってしまいます。よく、共感を示すにはどんな言葉がいいでしょうかと聞かれますが、セリフが合っていれば共感してもらえたなぁ〜と言う気持ちになるでしょうか?人間はそれほど単純ではありません。心の底から共感をしてくれて言葉をうしなっている状態が深い共感につながることもあります。つまり、共感を練習しようというふうに考えた時点で義務的な共感になってしまうのです。傾聴の多くのスキルの中でセリフで覚えてはいけないのがこの共感です。他のページで詳しく述べていますが、共感はしてしまうものであり、意図的にするものではないからです。

共感のトレーニングという意味では、共感が嘘臭くなかったかどうかを話し手に確認することが学びになります。

6)有効な質問

傾聴に有効な質問があります。傾聴に有効な促し方もあります。質問に関しては単体で練習してもあまりまくいきません。基本的なあり方やうなづきなどをマスターしてから、いくつかの質問を頭に入れ、最初のうちは意識して使ってみると次第にその質問の仕方に慣れてきます。ただ、トレーニングが足りないとその質問自体がわざとらしく、おかしな感じになってしまいます。より自然に質問ができるように同じ質問を何度も行った時に使うようにしてください。

他にも様々な傾聴のパートごとのトレーニング方法がありますが、傾聴学びつつ工夫をしていってください。

 


2.傾聴のトレーニングは知らない人と

傾聴のトレーニング相手を同じ傾聴を学んでいるクラスメイトや家族などにお願いする人がよくいます。しかし、そのようなトレーニング方法は多くの場合、悪い癖をつけてしまう結果になりかねません。

 

1)内輪受けの傾聴

以前は大手量販店に買い物に行くとパソコンなどの専門知識が豊富な店員が一般の人相手に専門用語まくし立てるように説明している場面をよく見かけました。パソコンのことがよくわからないで買いに来ているのにCPUがどうだとかUSB端子がどうだとか単語を並べられても聞く方がよくわかりません。
内輪で練習している人は専門用語やローカルなやり方が身に付いてしまい、いざ傾聴するときにおかしな癖が出てしまいます。
被災地に行って、「それでは傾聴させていただきますね」と言って傾聴を始めようとしても相手の方は「傾聴ってなんですか?」って言う顔でこちらを見るかもしれません。

2)世界観の狭さ

クリニックでうつ病の人のカウンセリングをしているとお笑い番組を見て笑っている人や自信満々の人もいます。カウンセリングに来て、悩みを話して寄り添って欲しい人もいますが、武勇伝を聞いてほしい人、夢に共感してほしい人もいるのです。
聞き手の世界観が狭いと例えばうつ病の人が悩んでいるので早めに寄り添うなくてはいけないと言う世界観で対応してしまいがちです。いろいろな人と傾聴の練習をすることで様々な発想方法、今まで当たり前だと思っていた受け止め方が実はたくさんある受け止め方の1つだったことに気がつくことで、より柔軟な傾聴することができるようになります。そのためには、様々な職業、様々な年齢、様々な相談内容、様々な立場の人と傾聴のトレーニングをすることが有効です。

 


3.正確なフィードバック

 

1)必ずフィードバックをもらう

傾聴した後に話してや観察をしていた人から正確にフィードバックをもらう事はとても重要です。自分が失敗したと思っていてもとても良いタイミングで反応ができていることもありますし、逆にうまくいったと思っていてもそうではないこともあります。必ず、自分の傾聴がどうだったかのフィードバックをもらい次の参考にするようにしてください。

2)相手の主観に注意

トレーニングにおいて、フィードバックをもらう時には注意が必要です。話し手や観察者はそれぞれの思いがあってフィードバックをします。例えば、クライアント中心療法を主に使っているカウンセラーは傾聴がうまくいったかではなく、傾聴が教わった通りであるかを重視する傾向があります。傾聴の授業で自分自身がこのぐらいでうなづくべきだと教わっていたら、聞き手の人がどれぐらいでうなづいているかを評価するようになります。傾聴のトレーニングでフィードバックをもらうときにはフィードバックをする人の主観をカットしながら聴く必要があります。

3)フィードバックを生かす

このようにしていたフィードバックを次の現場に生かすのがトレーニングにおいて非常に重要です。自分が勝手にうまくいっていると思っているのと客観的に判断してどれぐらいできているのかを教えてもらう事は天と地ほどの差があります。

 


4.実践の重要性

傾聴のトレーニングに置いて、最も重要なのは実践に近いトレーニングをすることです。

1)コミニケーションのトレーニング

傾聴をするスキルを身に付けてもすぐに傾聴させてもらえるわけではありません。傾聴させてもらうためにはそのためのコミニケーションスキルが欠かせません。そういう意味でもトレーニング相手はいつも同じ人にしたり誰かに探してもらったりするのではなくそこからが練習だと思い私に傾聴のトレーニングをさせてくださいと言う交渉することも重要です。

2)話の長さが違う

一般に練習では話題が少なく、根が浅いので傾聴の時間が短く終わってしまう傾向にあります。そうすると、トレーニングをしている時、どのように話を持たせるかが重要なテーマになってきます。しかし、精神科や介護施設などでは本気で悩んでいる人が相談をしてくるため、逆に話が短く終わる事はあまりありません。現場から離れたトレーニングばかりをしているとそのような感覚がずれてしまいます。そのためにも実践の場を持つことが重要になります。

3)実践心理学講座

上記のような問題を解消するために私たちは実践心理学講座と言う講座を定期的に開催しています。そこには心理カウンセリングやコーチング、傾聴などを学んで自らのスキルを高めたいと思っている人と今現在、うつ病や引きこもりパニック障害などの悩みを抱えている人が両方とも参加しています。その日、偶然仲良くなった人に対して傾聴行うことで応用力がつき、どんな人でも対応できるようになります。また、同じように勉強にしに来ている人たちがいるので隣で傾聴している人の姿を見ることで他の人からスキルを学ぶトレーニングにもなります。