実践心理学講座スタッフの浜端望美です。

今日は実践心理学講座のことからはなれて、カウンセラーをはじめとする心理職の話しを少し。

心理職の資格で最も有名なのはおそらく臨床心理士でしょう。
でも、臨床心理士は国家資格ではありません。

実はカウンセラーに国家資格はありません。
心理療法には様々な種類があります。

・来談者中心療法(いわゆる傾聴を中心にカウンセリングを行うもの)
・家族療法
・認知行動療法
・催眠療法
・芸術療法
・EFT
・EMDR

あげればキリが無い程、たくさんの種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、ひとつひとつを説明していると長文になってしまうので今回は割愛しますが、心理療法のひとつ(または複数)に特化してカウンセリングを行っている人もいます。
これらも当然民間資格。ひとくくりに『カウンセラー』です。

というのが、今までの業界の流れでしたが、2015年にはじめて心理職の国家資格化が可決されました。
その結果、新しく誕生することになったのが「公認心理師(こうにんしんりし)」という資格です。
(資格についての詳細はWikipediaに分かりやすくまとめられています→公認心理師)

 

今までカウンセラーとして活動してきた人(現任者)が公認心理師になるには?

 

国家資格化が可決されて以降、注目されていたのがこの疑問。
今までカウンセラーとして仕事をしていた人(厚生労働省のサイト等では現任者と呼ばれています)は、どうなるのでしょうか。

『5年以上の実務経験がある人は規定の講習を受けることで、公認心理師の受験資格が得られる』
とされていましたが、何を持って実務経験とするのか?これまではそれが明言されていませんでした。

自分が現任者にあたるのか否か、疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。

先週(2017年10月)になってやっと、この概要が発表されはじめました。
現任者として認められる基準は、ざっくり以下の三点です。

①働いている場所
医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働分野の該当施設で、

②期間
常態として週1日以上の勤務を5年以上続けていて、

③勤務内容
心理状態の観察・結果分析
支援者とその関係者への相談・助言・指導その他援助、を業務内容としている

この条件を満たしていれば、基本的には現任者です。

そして、現任者は公認心理師の受験資格を得るための『現任者講習(30時間)』を受けることができます。

この講習を受けて受験資格を得て、国家資格試験に合格すれば、正式に公認心理師になることができます。

措置期間は5年間。
5年以内に現任者講習を受けて、国家資格試験に合格する必要があります。

早くも現任者講習の受付がスタートしていますが、
WEBでの申し込みは開始後わずか1時間で定員いっぱいになっていました。

郵送での締切は2017年11月17日消印有効となっていますが、こちらも先着順とのこと。10月中には満席になっているかもしれません。
(一般社団法人日本心理研修センンター公認心理師試験)

 

公認心理師の資格は必要?不要?

私自身は、上記の現任者の条件を満たしています。
まだ現任者講習の申し込みはしていません。

正直迷っています。

それは、「公認心理師」というカテゴリーに入る必要性を感じないからです。
カウンセラーの仕事は、資格名よりも、“いかに人から信頼されているか”が大切。

これまでも特に資格名や経歴を出していませんが、
口コミとご紹介だけで、カウンセラーのお仕事をいただいています。

けれど、国家資格を持っていた方が、活動の幅が広がるのかもしれません。
初対面の方にとっては安心材料になる可能性もあります。

新しい資格なので、まったく未知です。

“現任者”の要件が想像以上に甘いことも懸念材料になっています。
週1のボランティアでなんとなく活動していた人も、現任者と認められる可能性がある。
と読み解ける内容です。

たいした志も無く、
「国家資格だからとりあえず取っておこう!」
と思う人が殺到するのは避けられないはず。
世の中公認心理師だらけになりそうです。

難易度を上げて、頭の良い人だけが合格する資格が良い資格だとは全く思いませんが、必要な人に適切な支援を届けられるものであってほしいと願っています。

これからカウンセラーを目指す人は?

2016年に、「公認心理師の誕生によって、民間のカウンセラーは今までの仕事を続けられなくなるのか」ということについて、厚生労働省に問い合わせたことがあります。

「医療機関や学校などに対して、公認心理師だけを雇用するように強制できる類いのものではない。」
との回答でした。

これって、実は現状と同じです。
例えば、「催眠療法が最も優れている!」と思っているお医者さんの病院では、催眠療法の専門家を雇います。当然この人は公認心理師とは限りません。

カウンセリングを受けたくて探している人も、
「催眠療法を受けたい!」と思ったら、自分で探して自由に受けることができます。

なんだか肩こりに似ているなぁと思います。

肩こりで病院に行っても、どうせ湿布をもらうだけだから、わざわざ病院に行こうと思う人は少ないのではないでしょうか。

それよりも、腕の良いマッサージ師を探すはずです。

同じように、公認心理師にみてもらってもなぁ、、と思う人は、
民間資格であっても、自分にとって効果のありそうなカウンセラーを探すでしょう。

やっぱりカウンセラーは人相手の仕事。
信頼してもらえる存在でないと、お仕事にはなりません。

だから、臨床心理士さんでもなかなか思うようなスタイルで仕事ができている人が少ないのが現実。おそらくそれは国家資格になっても同じこと。

されど、国家資格(笑)
だから余計に迷ってしまいます。

国家資格試験自体の難易度も分かりませんが、心理の業界は正解の無い世界。
福祉の業界の狭い常識に捉われて考えることも、一般の感覚とはずれていってしまうので、危険だなぁと感じています。

実践心理学講座に参加していただく人をはじめ、老若男女たくさんの人のお話を伺いながら、措置期間の5年の間にのんびり決めたいと思います。

私と同じように、既にカウンセラーとして活動している現任者のみなさんはどうしますか?
お会いする機会がありましたら、ぜひご意見を聞かせてくださいね。