コルボの魔術
ラフォルジュルネで聞いた『レクイエム』
毎年ゴールデンウイークになると、ラフォルジュルネというクラシック音楽のイベントが丸の内で開催されます。私がはじめてクラシック音楽のコンサートを体験したのは2014年のラフォルジュルネでした。当時学生だった私は、ふらっと会場である国際フォーラムに立ち寄り、売り切れ御免の文字が並ぶ中、まだ残っていたチケット(学生券、500円でした。)を購入しました。曲目はフォーレの『レクイエム』。私の知らない曲でした。指揮者は80代という高齢のミシェル・コルボさん。コルボは「合唱の神様」とよばれるほどの高名な指揮者でしたが、当時の私には知る由もありませんでした。
音楽でつながった一体感
二階席ながら中央に近い座席に腰を下ろし、開演を待ちます。やがてコルボと合唱団が舞台の袖から現れます。オーケストラはまだかな、と思っていたところ、コルボがタクトを振り、アカペラの曲が演奏されました。曲目も、歌詞もわかりませんでしたが、その明鏡止水、柔らかい声の美しさにはっとさせられ、聴衆の意識が一途に舞台に縛りつけられます。アカペラののち、オーケストラが入場、フォーレの『レクイエム』が始まります。フォーレの優しい響きは聴衆を一つに包み込みます。つい30分前はみな見知らぬ人同士であったのに、コルボの魔術で指揮者とオーケストラ、聴衆が「音楽」という結び目でつながったあの瞬間は、忘れることができません。死者を弔う『レクイエム』を通じて、あの日の指揮者とオーケストラ、聴衆が作り出した一期一会の体験は、与えられた命をぎゅっと抱きしめたくなるような、不思議な感動をもたらしました。
聞こえている音をどれくらい意識していますか
今、あなたのいる場所に音はどれくらいあるでしょうか。少し意識するとこんな音がしていたのかという音もあるはずです。それはあなたが聞いていなかったからではなく、意識が内側に向いていたからです。実はこの意識が外に向いているか、内を向いているかで悩みへの気持ちは変わります。オーケストラで聞こえてくる音、光景にすべての感覚を支配されていると意識はすべて外側に向いています。そのとき、あなたは何も悩んでいないはずです。そんな空間を作り出せるまるで魔術のようなコルボさん、実は人の心をそんな風に動かせる魔術を使える人が実践心理学講座の講師にもいます。あなたもこの魔術にかかって、悩みを吹き飛ばしてみませんか?