カウンセリングマインドとは?
カウンセリングマインドとは?
カウンセリングマインドは「人の心」を大事にして人と関わろうとするときにするべき態度を指します。教育現場・医療現場・ビジネスの現場などではカウンセリングマインドが常に優先されるわけではありません。競争・機能性が優先される社会でも人として割り切れない「心」「気持ち」「尊厳」などの部分を大事にするためにカウンセリングマインドは欠かせません。
カウンセラー以外が使うカウンセリング的関わり
カウンセリング的な関わり方はカウンセラーだけがしているわけではありません。教育現場で子供達の成長を見守る先生や医療現場での看護師、企業においても人事的な関わり、サービス業の一部などでもカウンセリングマインドが必要になります。記事の後半で詳しく書きますが、物質ではなく、心・気持ちを大事にする社会になるほど、カウンセリングマインドは経営者や営業マンなどにも求められるスキルになりつつあります。
カウンセリングマインドを発揮する意味
人は分かり合えているようで全くと言って良いほど理解し合えていません。「愛情」「平和」「信頼」とは具体的には何を指すのでしょうか?「愛情」が多いか少ないかはどのように測ったら良いでしょうか?カウンセリングマインドを発揮しながらコミュニケーションをすることで「愛情」というラベル的な言葉で語られる概念の中身を共有することができます。お客様の言葉にできない思いを察する。子供がうまく表現できない気持ちを理解する。カウンセリングマインドを発揮することで普段は補えていない心と心の行間を埋めることができます。
カウンセリングマインド的な態度
カウンセリングマインドはその人の態度に表れます。表面的な言葉や表現をスキルで取り繕ってもカウンセリング的な関わりにはなりません。態度からカウンセリングマインドが染み出してくるような関わり方が欠かせません。そんな態度になるために重要な3つのポイントは以下の通りです。
ポイント 1 自分の価値観をまぜない
「子育てをしているんです」「ああ、それは大変ですね!」そんなやりとりをよく耳にします。「子育て」と聞いただけで何を理解したのでしょうか?カウンセリングマインドがない人は自分の勝手な価値観を相手の話に混ぜてしまいます。まず、聞き手が思い浮かべている子供と相手が育てている子供は別人です。年齢も性別も人見知りの度合いも好奇心の度合いも体力も違うはずです。そして、子育てをしている環境、部屋の大きさ、家族構成、経済力などもおそらく違います。自分の価値観を混ぜずに話を聞く態度が基本になります。
カウンセリングの現場から
「誰の話をしているのかわからない」カウンセリングを受けるたびにそう感じます。私の話を十分に聞くことなく、誰かあるいはカウンセラーの先生の体験を上書きして「わかったわ!それはとても大変だったわね!」と理解を示されても、「私」を理解してもらえたと思えないと「それは誰のことですか?」と聞きたくなります。悩んでいる人は「理解してほしい」と願いながらカウンセリングを受けます。「ああ、理解された」と思ってもらえることがカウンセリングマインドの最低限ではないでしょうか?(30代 うつ病 女性)
ポイント 2 人は「気持ち」を語っている
カウンセリングマインドを大事にしていると人は「情報」ではなく「気持ち」を話していることに気づきます。表面的な話は建前でその背後に「気持ち」が隠れていたり、たくさんのエピソードはたった一つの「気持ち」をわかってほしいということもよくあります。カウンセリングマインドがない人が話を聞いていると「情報」をメモするばかりで「気持ち」を聞き分けることができません。
カウンセリングの現場から
「先生!私は大丈夫です!」と言いながら目を潤ませている生徒がいました。その生徒が発する言葉は「大丈夫」を裏付けるものでした。しかし、その言葉とは裏腹に目が潤んでいるのです。「本当は大丈夫じゃないでしょう?」と目を覗き込むと必死にこらえていた涙が目からこぼれました。カウンセリングマインドは議事録を取るような関わりではない部分にあります。
(50代 養護教諭 女性)
ポイント 3 前提(9割の治療者ができていない態度)
カウンセリング的な関わりを必要としている人は基本的に弱っています。しかし、本当に弱い存在なわけではありません。多くの治療者は悩んでいる人、弱っている人を「ダメな人」という前提で関わります。カウンセリングマインドで最も重要なのはこの「前提」です。「あなたはダメな人だから」というメッセージを発しながら傾聴、受容、共感されても相手の力を奪うだけだからです。
カウンセリングの現場から
どれだけすごいテクニックを駆使されても上から目線でダメな人扱いされたら自信を持つことはできません。将来的に素晴らしい私になることを応援してくれるような関わりをしてくれた人が現れた瞬間に私は元気になることができました。カウンセラーであってもなくてもそんな関わり方をされることが弱っている時にはチカラになると思います。
カウンセリングマインドを支えるスキル
カウンセリングマインド的な態度ができた状態で以下のスキルを使うと非常に強いチカラになります。
うなづき
人は自分の話をした瞬間に相手の反応を見ます。「伝わったかな?」「役に立ったかな?」・・・その瞬間にこちらを見てうなづいてもらえると次の言葉が湧き出してきます。「わかりますよ!続けてください!」「面白いですね!それで?」というようなメッセージになるからです。ただし、うなづきを不用意に増やしすぎると緩急がなくなり、うなづきの効果が半減してしまいます。
カウンセリングの現場から
私が感情を込めた瞬間に大きくうなづいてくれるカウンセラーさん。そのアクション一つで報われた気持ちになります。一方で大して重要ではないポイントにも適当にうなづいているカウンセラーさん。私の話を聞いているのかなと思います。うなづきはポイントがずれたら終わりだという真剣さがカウンセラーさんから感じられるのとられないのは大きな違いです。こちらを見ていないカウンセラーさんは論外ですが。(40代 うつ病・摂食障害 男性)
あいづち
あいづちを適切にうつことでカウンセリングマインドを伝えることになります。「あなたの話を・・あなたの気持ちを理解していますよ」と表現することになるからです。一方であいづちのタイミングやセリフ、ニュアンスを間違えると逆効果になります。
カウンセリングの現場から
「ああ〜そうだね〜」と深く、長く、深呼吸をするようにあいづちをゆっくりしてくれる70代のカウンセラーの噛みしめるような反応にようやくわかってもらえたと実感しました。たくさんしゃべるカウンセラーより、噛み締めてもらった気になりました。(30代 うつ病 女性)
伝え返し
相手の話を伝え返すと理解を示すことになります。頻繁に伝え返しをしていると相手の話を遮ってしまったり、単純に相手が話す時間を奪ってしまうことになるので伝え返しは必要最小限で行います。
カウンセリングの現場から
「そう!そうそう!」と大きくうなづきたくなるような伝え返しは「ああ、伝わった!わかってもらえた!」という気持ちになります。特に声の調子や表現方法、仕草までニュアンスを真似るくらいの伝え返しは心をほぐしてくれます。(50代 うつ病 男性)
仕事をしない
聞き役やカウンセラーの立場の人が仕事をするということは相手が仕事をしなかったということです。言葉たくみに誘導するよりは間をあけたり、じっくりまったりして相手に仕事をしてもらいます。それがその人が自立して、出口に向かう本質的な支えになります。
カウンセリングの現場から
カウンセリング中にカウンセラーが10%を越えて話している場合、カウンセリングはまず成功していません。カウンセラーが焦ったり、気負ったり、見えなくなっている時に限って、たくさん話をします。五分五分で話をしているのはもはやカウンセリングとは呼びません。
(50代 心理カウンセラー養成講座講師 女性)
カウンセリングマインドを生かす
カウンセリングマインドはカウンセリングの現場でだけ必要なものではありません。教育現場、企業、育児など様々な場面でカウンセリングマインドを生かすことができます。
学校におけるカウンセリングマインド
1990年代を境に学校教育の中にも「生徒の心を聴く」カウンセリングマインドが重要視されるようになりました。新しい教育のスタイルとして先生がカウンセリングマインドを学び、一方的な教育から生徒との対話に近い形の教育に変化してきています。
ただし弊害もあります。生徒の気持ちを重要視するあまり、生徒を怒れない、ダメなことをダメと言えない先生が増えました。カウンセリングマインドは相手のことを理解するという意味合いがありますが、甘やかせるという意味合いはありません。生徒の意にそぐわなくても伝えなくてはいけないことがあります。
北海道 小二行方不明のケア
2016年6月北海道にて、小二の生徒が行方不明になりました。陸上自衛隊の演習場で発見された少年に対して「ケアが必要」「ケアをしなければ」という報道が続きました。カウンセリングマインド的には確かにそうなのかもしれませんが、落ち込んでいなかった少年に対して、わざわざ「ケア」「かわいそう」「傷ついた」という枠組みに引きずり込む必要があったのかと疑問になります。自衛官に「お前かっこいいな!」と言ってもらえたらケアというよりも武勇伝になったかもしれません。 (朝日新聞)
企業におけるカウンセリングマインド
2015年12月にストレスチェックが義務化されました。それに伴い、企業内でもカウンセリングマインドが広まりつつあります。しかし、実際にはストレスチェック結果を持参して、産業医や労基署に駆け込む人も増えています。カウンセリングマインドを発揮すべきポジションの人とビジネスとして企業を運営していく人との連携、役割分担が今後重要になってきます。
育児におけるカウンセリングマインド
子どもを健全に育てるためには本人の気持ちに寄り添って、受容と共感をして自己肯定感を高める部分と本人の好みとは関係なく、強制してでも社会に出なくてはいけない部分があります。カウンセリングマインドが強すぎる家庭で育てられるとビジネス的なノルマ、ルールに対して頑張れない子どもになります。すべての組織で受容と共感をしてくれるわけではないからです。
カウンセリングマインドの害
カウンセリングマインドという言葉を使う時に私たちは何をイメージしているでしょうか?企業や学校、本来ならば医療介護福祉業界ですらカウンセリングマインドよりも大事なことがたくさんあります。集団生活を送っているのですから、個人的な気持ちや視野の狭い意見は場を乱すだけだと気づかないといけないこともたくさんあります。カウンセリングマインド至上主義によって、メンタル不全者が増えるというリスクを踏まえて、カウンセリングマインドを大事にするべきではないかと感じます。